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物語・小さな天使の物語

第3章 出会いそして・・・

 

「昨晩怪盗Lapinが現れ「人魚の涙」を盗み逃走・・・」
春休み中の日課にしている探検の準備をしながら、テレビの朝のニュースを見たカズは「へぇ~また現れたんだ・・・最近色々盗んでいるね。」
それを聞いた父は新聞を読みながら「でも、直ぐに元の持ち主の所に戻っているらしいぞ」と言う。
それを疑問に思ったカズは、「なんで?」と父に聞き返したが、父は「さあな、怪盗Lapin本人に聞いてくれ」と新聞を読みながら言うだけだった。
ちょうどその時、頼まれていたお弁当を完成させた母が「はい、お弁当、あと水筒ね」とカズに手渡した。
カズは「ありがとう」と言いそれを丁寧にリュックにしまった。
朝食を済ませた父は、出勤の準備をしながら「カズ・・・今日はどこに探検に行くんだ?」と聞きいてきた。
カズは「うん、近所のおばちゃんがココから30分行った所にある大きな公園に、大きな桜の木や綺麗な花壇があるっていってたから、そこに行くんだぁ」と言うと
「あ~あの大きな公園が、何でも小さな森とかボートのある大きな池とか色々有るらしいな、それじゃあ気をつけて行くんだぞ」と言うとカズの頭を優しく撫でるとそのまま会社に出勤して行った。
「いってらしゃ~い!!」
そうして、玄関で父をお見送りを済ませた後カズは、「今度は僕の番だね!!じゃあいってきま~す!!」と元気に家を出て行った。
ガスは、この春休みの間に色々な所に出かけて行った。
たんぽぽや菜の花が咲き乱れる原っぱの中にあるメダカのいる小川や、朝日や海に沈む夕日が綺麗な海岸・・・更には、電車に乗って町に出かけては色々なお店を見て回ったりもした。
そこで一番印象に残っているのは、白いゴシック風の洋服を着て、更にウサギ耳を付けて手品のパフォーマンスをする女の子だ。
カズも、手品自体ははテレビ等でよく見ているが、カズが一番ビックリしたのは手品で出てくる鳥が白い鳩では無く、オカメインコだった事だった。
たったこれだけの事だったのだが、カズには一番新鮮に写ったのだ。
それから、また見たいと思い何回か町に出かけていったが、その女の子が毎回場所を変えているのとタイミングが会わないのが原因でそれから会えていなかった。
ほどなくして、目的の公園に着くとカズは「綺麗だ」と聞いていた花壇に足を伸ばしてみると、そこには一面に色とりどりの花が咲き乱れていた。
カズはその花達そっと近づくと、やさしく話しをかけはじめた。
「綺麗だね、ムスカリさん」
「えっ、そうなの?本当はそんな名前何だぁ~」
「へぇ~知らなかったよ  って人間が勝手に付けちゃった名前なんだぁ~」
「うん、うん、あはははっ、そんな事があったんだぁ~」
「うん、うん、そうなんだぁ~じゃあ行ってみようかな?」
「うん、じゃあまたね」
カズは早速花壇のお花に教えてもらった、森の中にあると言う小さな花畑に向かいはじめた。
カズは、物心が付いた時から不思議と植物や動物達とお話が出来る能力が有った。
当然その事を家族以外の誰かに話しても、殆どの人は信じてはくれなかったのだが、カズ自身は全く気にしていなかった。
カズにとっては、お花や動物たちと話が出来るのは事実の事だし、家族以外の人にも少なからずも信じてくれる人がいるので、カズはそれで十分だった。
カズが森の入り口に指しかかった時、森の植物達や森に住む動物達の様子が変なのに気づいた。
何と言うか・・・少しざわめいていると言うか・・・
植物や動物達がこんな反応をしているのは、カズ自身経験をした事が無かったので少し怖くなったのだが、そのざわめきがカズが来た事で少し収まったのを感じると、意を決して森の奥に進む事にした。
いつもなら、鳥達が囀り合って賑やかな森の中、今は昼間だというのにしんと静まり返っていた。
ゆっくり、ゆっくりと森を進み森を抜けると、ふっと暖かな日差しと柔らかい風がカズを包みでいった。
そこは森の中心が円形状の日当たりの良い原っぱになっいて、その原っぱに色とりどりの花が咲き乱れ小さな花畑を作り出していた。
その中心に小さな人影が蹲っていた。
カズがその影にそっと近づくと、それは金色に輝く髪を持ち、白く透き通るような肌をした女の子だった。
その女の子は、どおやら泣いている様で時々「うっ・・ひっ・・」っと,耳を澄ませても聞こえるか聞こえないかぐらいの声がしていた。
「どおしたの?何で泣いているの?」とカズが声をかけると、女の子は涙を拭きながら振り返り、「うんん・・・何でもないの・・・」と答えた。
カズはそれでも心配で、「誰かに苛められたの?それなら、僕が守ってあげるよ」と言うと、女の子は笑顔になり、「うふふ、ありがと、もう本当に大丈夫だから・・・」
「ちょっと、目にゴミが入っただけだから、心配かけてごめんね。」と答えた。
それを聞いたカズは安心し自己紹介を始めた。
「僕は、カズって言うんだぁ~、君はなんて名前?」
「私は、ローズって言います・・・よろしくね♪」
「うん、よろしく」
「ねぇ・・・ローズちゃんって、やっぱり外国人なの・・・?何処の国なの?」とカズが聞くと、ローズは「うふふ・・・それは秘密ね♪」と笑顔で答えると、カズはその可愛さに思わず顔を赤くするのだった。
「あの・・もしヒマなら・・・その・・・あっちで一緒に遊ばない?」
「・・・?」
「えっと・・・その・・・僕・・・この町に引っ越してきたばかりで・・・まだ友達がいないんだ・・・それに・・・お弁当も沢山あるし・・・」
顔を真っ赤にし必死で説明するカズをみて、ローズは思わず「くすっ」と笑ってしまった。
「えっ・・・と・・・」カズはなぜ笑われたのか分からずに、「えっと・・・」と同じ言葉を繰り返しながら、更に顔を真っ赤にするのだった・・・
「うん、一緒に遊ぼ♪」
そう言うとローズはカズの手を取り、さっきカズの言った方へ向かい駆け出すのだった・・・
いきなりの事だったので、カズはバランスを崩し転んでしまったが、不思議と痛くなかった・・・それは多分、ローズが元気になったのがうれしかったから。
それから・・・2人でブランコに乗ったり、かくれんぼをしたり、森の小さな花畑でお弁当を食べたり、花の冠を作ったり、楽しい時間が過ぎていった・・・。
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追いかけっこをしながら芝生のある広場に来た2人は、手足を投げ出し芝生の上に大の字に寝転むと、青い空に浮かぶ雲がゆっくりと流れていくのを眺めながら・・・
「あ~楽しかった!!」
「私も~♪」
2人は力一杯遊んだのか、少し息が上がり気味だった。
「ねぇ・・・ローズちゃん」
「ん・・・?」
「今度は、高台にある大きな桜の木の所に行こう♪」
「そこは、遠くの海に沈む夕日がとても綺麗なんだって!!今から十分間に合うよ、それに今は桜も咲いているから、きっと凄く綺麗だよ!!」
「うん♪じゃ早く行こう♪」
2人は「すくっ」と起き上がると、手をつなぎその高台の桜の木を目指し始めた。
「「うわ~~~きれい~~~!!!」」それが2人の第一声だった。
桜の花は丁度満開、時折吹く海風に誘われて、桜の花びらがダンスを踊っていた。
さして、遠くの海には大きな船がゆっくりゆっくり進んでいるのが、微かに見えていた。
「風がきもちいい・・・それに微かに海の香りする・・・それに、桜の花も綺麗・・・」
「うん、本当だね♪ローズちゃん♪」
そう言うと、2人は顔を見合わせ笑い合うのだった。
「もしかしたら、この木に登るともと綺麗に見えるのかなぁ~?」
そう言うと桜の木の根元に走りより、桜の木を見上げた。
「う~ん・・・何とか上れるかな?」カズがそういった瞬間、「じゃあ、お先に♪」の声とともに、近くから大きな影がふわっと舞い上がっていった。
カズが思わずビックリして、ローズのいる筈の所を振り返るのだが、ローズの姿が無かった・・・。
「カズく~ん♪こっち、こっち♪」
ローズの声が上から聞こえるので、カズは桜の木を見上げてビックリ!!
だって、さっきまで隣にいたローズが、桜の木の枝の上にちょこんと座っていたからだ!!
「えっ!ええっ!!」とカズが驚いているのに気づかないローズは・・・
「うわ~♪カズ君の言った通りだあ~♪」
「ねぇ~♪カズ君も、早く上っておいでよ~♪」と言いながらローズは、カズを見ると・・・カズは、ポカンと口を開けてローズを見つめていた。
「・・ん?どおしたの?」
「いや・・・ローズちゃんの背中に白い羽が・・・」とカズはローズの背中の純白の羽を指差した。
「あっ・・・!!コレ?驚いた?実は私・・・天使なの♪みんなにはナイショだよ♪」と言うと、笑って舌をペロッと出して見せた。
「えっ!えええっ!!ローズちゃん天使なの!!」
ローズは人差し指を口に当てながら、「し~っ・・・」のポーズをとった後「ほら、カズ君も上っておいでよ~♪」とカズを急かした。
カズは「ず、ずるいよ~」と言いながらも、桜の木を優しく撫でながら、「痛かったら、ゴメンネちょっと登らせてね」と一言言って、桜の木を登っていった。
「むぅ~・・・思ってより木に登るのって、難しいなぁ~・・・」
「カズ君・・・大丈夫?」
「うん、大丈夫・・・それより僕にもローズちゃんみたいに羽があったらよかったのに・・・」
「あはは・・・ほら、もう少しだよ♪頑張って!」
「うん・・・よっ・・・も、もう少し・・・」
「ふぅ~やっと登れた・・・」
「カズ君頑張りました~♪ぱちぱちぱち~☆」
「もう~人事だと思って~・・・」
「えへへ・・・ごめんね♪」
「べ。別に謝らなくていいよ・・・それより海がキラキラ光ってる!」
「うん・・・とっても綺麗・・・それに風もとても気持ちいい・・・」
「夏になるとね、近くの海岸で海で遊んだり、ちょうど真ん中にある小島から、花火も上がるんだって!」
「花火?花火って何?」
「えっ!!花火・・・知らないの?」
「うん・・・天界にはそんなの無かったから・・・ねっカズ君♪花火って何?詳しく教えて♪」
「えっとね・・・夜になるとね、ど~んと大きな音と同時に、お空にこ~んなに大きなお花が沢山咲くんだぁ~」
「いろんな色や色んな形のがあってね、とっても綺麗なんだぁ~♪」
「へえ~・・・私・・・見てみたい♪」
「それなら、一緒に見ようよ!!」
「えっ!!」
「ローズちゃん花火見たこと無いんでしょ?それなら僕と一緒に見ようよ♪花火の事・・・少しなら知ってるから・・・」
「そ、それとも僕とじゃダメかな・・・?」
「だ、ダメじゃない!!カズ君と一緒に見たい!!」
「よ、良かった♪じゃ、約束だよ♪絶対だよ♪」
カズがそう言った瞬間・・・ローズの顔色が少し曇ったが、カズはそれに気づかずに話を続けた。
「あとね♪あとね♪夏になるとこの公園で大きなお祭りがあって、皆で盆踊りや肝試しをしたりするんだって!!それに色々なお店もいっぱいあるんだって♪」
「あと、冬になると公園一面に雪が積もって、雪合戦をしたり雪だるまも作れるんだって♪」
「カズ君・・・詳しんだね・・・」
「えへへ・・・本当は僕も引っ越してきたばかりだから、よく知らないんだぁ~・・・」
「えっ・・・でも・・・」
「実は・・・今話したのは、みんな近所の人から聞いた話しなんだぁ~・・・」
「あはは・・・そうなんだ・・・」
「ねぇ、一緒に見ようよ♪ローズちゃんもよく知らないんでしょ?」
「う、うん・・・」
そう言うと、ローズはふわっと羽を広げ木を降りていった。
それを見たカズも登る時の半分の時間で、木を降りていった。
「どおしたの?」
「・・・・・・」
「ローズ・・・ちゃん?」
「わ・・・私・・・そろそろ天・・・天界に・・・帰らなきゃ・・・」
「えっ・・・!!ま・・・また明日会えるんだよね?」
「・・・・・」
「あ、明日じゃなくても・・・ま、またすぐに会えるんだよね?」
カズの期待を裏切るように、ローズは無言で首を横にふった。
「い、嫌だよ!!せっかくローズちゃんと仲良くなれたのに!!」
「行かないで!!ローズちゃん!!」
「わ、私も嫌だよ!!せっかくカズ君と仲良くなれたのに!!」
「私も帰りたくないよ!!カズ君とずっと一緒にいたい!!」
そう言うと、泣きながら二人はぎゅっと抱き合い、そのままの姿勢で地面に座り込んだ。
「明日もカズ君と一緒に桜を見たり、木の上から海を見たい!!」
「うん・・・」
「カズ君と一緒に綺麗な花火を見たい!!」
「うん・・・」
「カズ君と一緒に近くの海岸で遊んでみたい!!」
「うん・・・」
「カズ君と一緒に夏祭りに行って、盆踊りや肝試しをしたり、色々なお店を見て回りたい!!」
「うん・・・」
「カズ君と一緒に公園に積もった雪で、雪合戦をしたりや雪だるまを作りたい!!」
「うん・・・」
「それから・・・それから・・・」
「うん・・・うん・・・」
それ以上二人とも言葉が続かなかった・・・
ただひたすら、二人で抱き合って泣くのが精一杯だった・・・
いっぱいいっぱい二人で泣いた後、ローズはすっとカズにある物を差し出した。
「な、なに・・・?」
「ローズクォーツの首飾り・・・ローズクォーツは私の守護石なの・・・これを私だと思ってずっと身に着けてくれる?」
「うん、約束する!!何があっても肌身離さず身につけるよ!!」
それを聞いたローズはにっこりと笑い「ありがとう・・・」と一言言うと優しくカズにキスをして、2~3歩カズから距離をとった。
そこには、優しそうな顔をしローズと同じ様に背中に羽の生えた男性の天使が立っていた。
「カズ君私は、ラファエルと言います・・・ローズさんと仲良くしてもらってありがとうございます。」
そう言うとラファエルは、やさしくカズの頭を撫で始めると、カズに眠気が襲い始めます。
「ローズ・・・ちゃ・・ん・・?」
カズは、目の前が白く消えていくのを感じながら深い眠りにつきます・・・
目から涙を流し・・・ローズの消え行く声を聞きながら・・・
「ごめんね・・・ごめんね・・・約束を守れなくて・・・ごめんね・・・またカズ君に会いにくるから・・・」
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「・・・君・・・カ・・・君・・・ズ君・・・カズ君・・・」
「・・・・あっ・・・?」
「もう・・・こんな所で眠っていたら、風邪を引いちゃうぞ!!」
「神社のお姉ちゃん・・・?・・・どうしてココに・・・?」
「うん?ああ~買い物の帰りなの♪」と言いながら右手に持ったスーパーの袋を指差しながら、言葉を続けた。
「私ね、この桜の木下で夕日を見るのが日課なの♪」
「いつもの様にココに来たら、木の根元でカズ君が寝ていたからビックリしちゃった♪」
「カズ君は何しに来てたの?お花見?」
「・・・夢・・・だったのかな・・・?」
「ん・・・どうしたの?」
「・・・・・・・・・・・」
「・・・あれ?カズ君・・・右手に・・・何持ってるの・・・?」
「えっ・・・?」
ぎゅっと強く握られた右手を開くと、薄くピンク色に透き通った石が付いた首飾りが姿を現した。
「まぁ・・・ローズクォーツの首飾り♪」
そう言って、アメジストがカズの顔を見ると、カズは眼からポロポロと涙を流していた。
「ど・どうしたの?」
「わ・・・分からないよ・・・分からないんだけど・・・なぜが・・・なぜか眼から涙が出てきちゃうんだ・・・そして・・・とても悲しんだ・・・」
そう言うと、カズは大きな声で泣き始めてしまった・・・
そんなカズをアメジストは優しく抱き寄せ、やさしく頭を撫でるのだった・・・
「何か凄く辛い事が有ったんだね・・・大丈夫だよ・・・誰も見ていないから・・・今は気の済むまでお姉ちゃんの胸の中で泣いていいよ・・・」
そう一言いうとあとは無言で、いつまでもいつまでもカズを慰めるのだった。
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