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僕は、魔法少女

青く澄み切った空に2人の声が響き合っています。
ココは海沿いの国営公園・・・今日は仮装イベントが開催されています。
「ほ・・・本当にコレを着るんですかぁ~・・・」
幼馴染の女の子「クー」に衣装の入った紙袋を渡され紙袋の中身をチラ見しながら、困惑するフィル。
「あたり前じゃない!!私ちゃ~んと約束したわよ!!」
そう言うとクーは、更に紙袋をフィルに押し付けるのだった・・・。
「で・・・でもコレって・・・」そうフィルが言いかけた瞬間しびれを切らしたクーが「ええい!!つべこべ言わずにさっさと着替えて頂戴!!私、向こうで待っているから!!」と言い放ち少し離れた時計台の下に歩いて行ってしまった。
その姿を見たフィルは、「はぁ~」とため息をつきトボトボと男子更衣室に入っていくのだった・・・。
更衣室には、姿見用の大きな鏡が1つ置いてあるだけでガランとしていた、殆どの人は早々と着替えをを済ませたのか、数人が着替えているだけだった。
そして、改めて紙袋の中身を確認すると思わず「マジですか・・・」と嘆いてしまった。
紙袋の中身はと言うと、ピンクを基調したドレス風の服で、全体的に白いフリルやリボンが散りばめられているいわゆる今流行の「甘ロリ」の服と
シャンパンゴールドの少しカールの効いたロングヘアーの鬘と、ピンクの靴とひざの所まであるロングの靴下・・・

そして、ご丁寧にお化粧道具〔手書きの解説書付き〕まで入っていた。
フィルは、その紙袋の中身をしばらく少し見つめるとしぶしぶ着替え始めるのだった。
そして、着替えながら一ヶ月前にした約束を後悔するのだった・・・。


一ヶ月前の学校の帰り道・・・・・

「ねぇフィルお願いが有るんだけどさぁ~・・・今度の~」とクーが言いかけると「「お祭りに付き合え」だろ、別にいいよ」とフィルが笑って返事をして見せた。
「な、なぜ分かったのよ~」と少し顔を赤くしたクーが聞くとフィルは、「いつも気が強いクーが、そんな風に下手からお願いする時は、大体ソレしかないだろ」と答えると、クーは、「むう~・・・何でそんな所だけ妙に勘が良いのよ~」と小さく呟いた。
フィルにはクーが言った事がよく聞こえなかったらしく「ん?何か言ったか?」と聞くと、クーは顔を真っ赤にして、両手を顔の前でブンブン振りながら、「な、なんでもないわよ!!」と言うのであった。
ソレを見たフィルは、「変なの」と笑いながら言うのであった。
クーは一つ年下のフィルにからかわれるのがどうにも面白くなかったので、ひとつフィルに「ギャフン」言わせてやろうと思い一つの提案をするのであった。
「ねぇ、今から私と賭けをしない?」
突然のクーの台詞に「はぁ?」と首をかしげるフィル。
「だから、「今から賭けをして勝った方の言う事を何でも聞くって事」どお面白そうでしょう?」とクーが説明すると、フィルはすぐさま「いいよ!!何で勝負する?」と聞いてきた。
心の中で「単純・・・」と言いながら、クーは、目の前のゲームセンターを指差し「カントリーファイター4 3本勝負ってのはどお?」と言うと、フィルは
「よーし!!手加減無しだからな!!言っとくけど、このシリーズ得意だからな!!後で何言っても聞かないからな!!」と言いそのままゲームセンターの中に入っていってしまった。
そして、いざ勝負!!



完封負けをして、真っ青な顔をするフィル・・・・「えっ・・・コレって、つい最近出だばかりだよなぁ・・・何故だ・・・・」
「へへ~ん♪私のお父さんの会社は、ど~こだ♪実は私試作機をプレイさせてもらっていたんだ~♪」と笑いながらクーが言うと、フィルは忘れていたとばかりに項垂れるのだった・・・。
「さぁ♪どんなお願いを聞いてもらおっかなぁ~♪」と言いながら怪しい笑みを浮かべながら、近づいてくるクー。
「ちょ・・・ちょっと待て!!ソレって要はハメたんだよなぁ・・・それならこの勝負は・・・」とフィルが言いかけると、クーはおもむろにボイスレコーダーを取り出し再生ボタンを押す。
すると、「よーし!!手加減無しだからな!!言っとくけど、このシリーズ得意だからな!!後で何言っても聞かないからな!!」とフィルの声が再生された。
「手加減無しなんだよね?後で何言っても聞かないんだよね?」とクーが笑って言うと、フィルは「ごめんなさい・すみません・もう何も言いません」と言い観念するのだった。
それからフィルは地獄だった。
無理矢理クー御用達の専門店に連れて来られ、体のスミからスミまで採寸され衣装を注文する羽目になったのだから・・・。

この一ヶ月の出来事を思い出しながら着替えを済ませると目の前の鏡には、どこからどおみても女の子にしか見えない可愛い男の娘が・・・
「・・・ピッタリだな・・・・てか違和感無さすぎだろ・・・」と自分で自分を突っ込むのだった。
それから、手書きの解説書通りに軽く化粧をすませ外に出ると、「おお~!!」とざわめきが起きフィルの周りに人だかりが出来るのだった。
「す、すげ~完成度たけ~・・・」
「あれ、本当に男か?」
「可愛い~♪」
そんな声や生暖かい視線に囲まれ人だかりをかきわけながら、どおにかクーの元にたどり着く事が出来た。
フィルの姿を見たクーは「わぁ~本物の女の子みたい~♪」一言言うと、デジカメでフィルの女装姿の写真をバシバシと撮りまくるのだった・・・。
あまりにクーが写真を撮るので、フィルも恥ずかしくなり「恥ずかしいよぉ~」と顔を赤くしながら少し体をひねると、周りからもシャッター音が・・・
「すげ~完璧だ!!」
「うおっ!!恥じらいの仕草が◎!!」
「おおお まさぐり倒したい!!」
との声がシャッター音に混じって聞こえてくるのだった。
ソレを聞いたクーは、「よかったね♪フィルの姿好評だよ♪」と一言。
「いや・・・困惑しか出来ない・・・それよりなんか身の危険を感じるのだけど・・・気のせいかな?」とフィルが言うと、クーは「その時は諦めてね♪」と冗談を言うのだった。
それから、クーはイメージにピッタリの場所を見つけてはフィルに色々なポーズをさせ、ありとあらゆる角度から写真を撮りまくるのだった。
「さぁ~ 今度は、向うのにある花壇で写真を撮るわよぉ~♪さぁ~出発~♪そらゆけ~♪」とクーは上機嫌なのに対して、フィルは「う゛~恥ずかしいよぉ~」とクーの背中に隠れるようにコソコソとクーの後を付いて来るのだった。
「あのねぇ~ そんな風な行動をするから、余計に目立つのよぉ~・・・

もう少し堂々としたらいいのにぃ~・・・」とクーが半ば呆れ顔で言うと、

「そんな事を言われてもぉ~」とフィルが真っ赤な顔で答えるのだった。
「はぁ~・・・だから~」と言いかけたが、今のフィルにそれ以上言っても無駄だと思ったクーは、それ以上は言わなかった。
その時フィルが「あっ」と言って急に立ち止まると何かそわそわし始めた。
それに気づいたクーは、「どおしたのよ、急に・・・」と聞くとフィルは小さな声で「おっ・・・トイレ・・・」と少し離れた所にある売店のある建物を指差しながら答えるのだった。
「じゃあ、行って来なさいよ 私この先の花壇で待っているから」とクーが答えるとフィルは無言で頷いて、パタパタと駆けて行くのだった。
「ふふふっ・・・フィルったら、どっちのトイレに入るんだろう?」と思いながら、路頭に迷うフィルの顔を想像しながら笑うのだった。
一瞬そんな顔をしたフィルの写真を撮ろうと考えたのだが、流石にソレはやり過ぎだと思いクーはこの先にある花壇に向かうのだった。

一方フィルはちゃんと男の方に入ったのだが、トイレから出て来る時に他の男の人と鉢合わせをしてしまい、間違ったと思い込んだその人は「あっ!!すみません」一言言って、本来入ってはいけない所に入ってしまい悲鳴を上げられてしまった。
それを聞いたフィルは、「ヤバイ」と思い急いでその場を後にした。
「ふぅ~ ビックリした・・・大丈夫かなあの人?」と心配しながらもクーのいる筈の花壇に急いで向かう事にした。
当然ビックリしたのは相手の方なのだが、その後警察沙汰にまで発展していた事を当のフィルは知る事になったのは、次の日の新聞記事だった。
「あれ・・確かクーの言っていた花壇に行くには、この道だと思ったんだけど・・・あれれ・・・何この森?」自分が道に迷ってしまった事を悟ったフィルは、近くに有った「道案内図」を見て自分が見当違いの方向に進んでいた事に初めて気づくのだった。
「うわっ・・・変な所に行ってたな・・・とりあえず・・・」と言いつつ目的の場所に行く道のりを確認していたら・・・
「きゅー・・・・きゅー・・・」
微かな声が聞えた気がして「・・・ん?」とフィルは辺りを見回すが何もいない・・・「気のせいかな・・・」と言いつつフィルは再び「道案内図」に視線を戻そうとした瞬間・・・

「きゅー・・・きゅー・・・」
「いや!!気のせいじゃない!!」
そう言うとフィルは耳を澄ませ急いで辺りを捜し始めると、程なく近くの池でウサギらしい動物が池で溺れているのを確認する。
「た、大変!!急いで助けないと!!」
フィルは、洋服が濡れるのを構いもせず池に飛び込んだ。
「きゅー・・・きゅー・・・」
「もう少し・・・もう少しだから頑張って!!」
「きゅー・・・きゅー・・・」
「も、もう少し・・・」
フィルはどうにかその「ウサギらしい動物」を抱きかかえると急いで岸に戻るのだった。
「もう大丈夫だよ~ほらお好きな所にお行き」とフィルはその動物に話しかけると、「あ~あ・・・こりゃ後でクーちゃんに叱られるな」と笑って見せるのだった。
「きゅ~・・・」
「あはは・・・心配してくれてるんだね・・・、私は大丈夫だから早く森にお帰り」とフィルが言った瞬間・・・突然そのウサギみたいな動物が突然喋りだすのだった。
「パンパカパ~ン♪合格で~す♪」
その瞬間フィルの前で「ボウン」と白煙が思ったら、さっきまでウサギみたいな姿をしていた動物が、2頭身ウサミミ少女の姿になって姿を現した。
「!!!」
「私の名前は「ちむ」と言います♪貴方の名前は何て言うのですかぁ~♪」
「えっと・・「フィル」と言います」そうフィルが答えるとちむは今までの経緯を説明しはじめた。
「フィルと言うのですねぇ~♪可愛い名前ですぅ~♪実は、私は貴方みたいに心優しい女の子を捜して旅をしていました~♪」
呆気に取られながらもフィルが「旅って・・今溺れていたよ・・・ねぇ・・・」と言うとちむの目付きが変り「溺れてぇ~・・・?」
何か急に身の危険を感じたフィルは、「すみません・ごめんなさい・もう何も言いません」と言うとちむは、何事も無かった様に話を続けるのだった。
「実は、貴方にお願いが有るのです・・・それは、貴方に魔法少女になって欲しいのです。」
突然の非現実的な事を喋りだすので、流石のフィルも目が点になってしまうのだった。
「突然こんな事を言っても信じて貰えないかも知れませんが、実は今この星は大ピンチなのです!!暗黒魔王がこの星を我が物にしようとする為、密かに暗黒モンスターを送り込み人々の夢と希望を奪い始めているのです!!このままじゃ人々は、この星は夢と希望を失い暗黒化し、最終的には人々も闇黒モンスター化してしまいます!!お願いです!!この星と皆の夢と希望を守る為に魔法少女になってくれませんか!!」
「で・・でも・・・私男だし・・・」とフィルが言うと・・・
「あはは・・・何ご冗談を♪貴方は、どこからどお見ても心優しい女の子ですよ♪それに大丈夫ですよ♪私もしっかりサポートしますから♪」と言って信じてくれない所か更に話を進めるのだった。
「でわ、そこに立ってくださいな♪」とちむが言うので、とりあえず言うとおりにそこに立つと、突然周りの音がきえ辺りがうす暗くなるのだった。
ビックリしたフィルは動こうとするのだが、「動かないで!!」とのちむの一言にビクッとするのだった。
「魔法少女になる事を望む者がここにいる 少女 名を フィル 「杖」よ 少女に力を与えよ!! 」とちむが呪文らしき言葉を唱えるとフィルの前に突然光の杖が姿を現した。
どうしていいのか分からずにいるフィルに向かってむちは、「フィル!!その「杖」をとってくだい!!」と言い、訳も分からずにフィルは言われるままにその「杖」とるのだった。
その瞬間フィルは、ピンクを基調とし彼方此方にフリルを散りばめたミニスカートのドレス風の服を身に纏い、腰まである金髪のロングヘアーの魔法少女の姿になっていた。
「よっしゃあ!!夢と希望を守る魔法少女の誕生だぁ~!!」とちむの一言。
とほぼ同時に「・・・・・・っえええええええ!!!!!」とフィルの叫び声。
「さぁ♪これから私と一緒に、夢と希望を守る魔法少女として頑張りましょうね♪魔法少女の名前は何がいいかな♪」とちむは上機嫌。
「ちょっ・・・!!ちょっと待ってください!!私了承もしてないし、そもそも男・・・」と慌てふためくフィル。
「あはは♪本当にフィルさんは、本当にご冗談がお好きですねぇ~ 今の貴方は、どこからどおみても 完全に 魔法少女 で す よ ♪」
「!!!!!・・・ま・・まさか!!!・・・・・無い!!」
急転直下の展開と今まであった物が突然無くなってしまった事で、更に混乱するフィル。
「おほほほ♪一体何が無いのか分かりませんが、変身が解ければ全て元に戻りますよ♪なので、心配しないで下さいねぇ~♪」とちむは、笑って言うのだった。
「ちょ・・元に戻してぇ~」そうフィルは、言うのだが、ちむは「無理です。

一回契約したのですから、そう簡単に契約は取り消せません。」とキッパリ。 
「それに貴方が魔法少女になれたって事は、多少なりとも魔法少女になる素質があるって事ですよ♪それに選ばれた物しか魔法少女になれないので、寧ろ喜ぶ事ですよ♪」と続けた。
それを聞いたフィルは「まるで、どっかの詐欺マスコットだよ・・・」と小さく突っ込んでしまった。
「ねぇねぇ♪それより魔法少女の名前なんだけどさぁ~」とちむが言った瞬間・・・どこ~ん!!!「きゃーーーーーーーーーー!!!」
突然の爆発音とともに悲鳴が彼方此方から聞こえてくるのだった!!
「化け物が現れたぞーーーー!!皆逃げろーーー!!」
それを聞いたちむは、「フィル出番だよ!!大丈夫僕がサポートするから!!信じて!!」
フィルが躊躇していると、さらに「大変だぁ~!!花壇にいた女の子が化け物に捕まったぞーーー!!」と聞こえた瞬間フィルは花壇に向かって走り出した。

グルルルルルルルル・・・・
「ちょっと!!放しなさいよーーーー!!この!!このーーー!!」必死で抵抗するクーなのだが、化け物は全く歯が立たいでいた。
周りの人もその様子を遠巻きで見ていたのだが、「くそっっ一体どおしたら」と言いつつも成すすべも無くただ立ち尽くす事しかできないでいた。
そして、遂に化け物がクーを食べようとする素振りを見せた瞬間、周りの人は「もうダメだ」と目を覆い、クーが「嫌ーーーーーー!!!」と叫んだ瞬間、一つの光の筋が通り過ぎた!!
「もう大丈夫だよ♪みんな危ないからもう少し後ろに下がっていてね♪」との少女の声に皆は、恐る恐る目を開くのだった。
目の前には、ピンクを基調とし彼方此方にフリルを散りばめたミニスカートのドレス風の服を身に纏い、身の丈ほどある杖を持ち腰の辺りまであるロングの金髪を靡かせてた少女が立っていた。
その少女の傍らにはさっき化け物に捕まっていた少女がへたりこんでいた。
その近くに居た人の一人が「貴方は・・・?」というと、「魔法少女 ホープ」と答えにっこりと笑って見せると「この娘をお願いね」と言い魔物の方へ向かっていった。
魔物に立ち向かうホープに「さっき言った通りにやれば大丈夫だから」とちむが言う。
「うん」と頷くとホープは一つの呪文を唱え始めた。
「光の粒子よ 我が右手に集いて矛となり 彼の者を打ち砕け!! スターライト ブロシェット!!! 」
ホープの右手から無数の光の矢が発射され、化け物に飛んでいく!!!!
あたり一面に光が迸ると断末魔の声とともに化け物は跡形も無く消えていた。
その瞬間周りの人から歓声が沸き上がった。
一人佇むホープにクーが走りよってきて、「助けてくれて、ありがとう」と礼を言うと、ホープは「またね♪」と言って空に消えていった。
その姿を皆歓声を上げながら見送るのだった。



ちむと出会った森の中・・・

「ふぅ~・・・恥ずかしかったぁ~」と元の姿に戻ったフィルが言うとちむが「流石私の見込んだ女の子♪ これからもヨロシクね♪」と言う。
それを聞いたフィルは「えっ・・・化け物ってアレだけじゃないの・・・・あんなのが他にもいるの・・・?」と聞くと、ちむは当然のように「うん、そうですねぇ~・・・あと145800体ほど居るのかなぁ~・・・
魔王を倒すまでの道のりは長いけどお互い頑張ろうね」と返すのだった。
「そ、そんなぁ~」とフィル叫び声が森の中でこだまするのだった・・・。

これからもフィルの苦労は続きそうです。

多分おしまい。

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